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研究成果の最近の情報

靖宇馨 博士課程3年と奥崎秀典 教授の論文が米国化学会の学術誌ACS Applied Polymer Materialsに掲載され、Supplementary Coverにも採用されました。論文題目は「High Performance Aluminum Solid Electrolytic Capacitors Using Self-Doped Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)」で、高い電気伝導度を有する水溶性自己ドープ型導電性高分子(S-PEDOT)を電解重合により初めて合成し、アルミ固体電解コンデンサの電極に応用しました。S-PEDOTは陽極酸化したアルミ電極箔の微細なエッチングピットに効率的に浸透し、低い等価直列抵抗と92%の高い容量利用率を達成しました。高性能な導電性高分子アルミ固体電解コンデンサはハイスペック家電や次世代高速通信基地局、電気自動車に不可欠であり、今後さらなる用途展開が期待されます。

 

【雑誌】ACS Applied Polymer Materials, 7, 4955-4962 (2025)

【題目】High Performance Aluminum Solid Electrolytic Capacitors Using Self-Doped Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)

【著者】Yuxin Jin, Hidenori Okuzaki*

【doi】 10.1021/acsapm.5c00118

 

応用化学コース 佐藤玄 特任助教と東京大学、大阪大学らの共同研究成果が JACS Au 誌の表紙に採択されました。本研究では、retigerane 型セスタテルペンの生合成機構の全容解明に成功し、初期配座による高度な反応制御機構を明らかにしました。

天然物の複雑な構造は、酵素内部で多段階連続反応によって生合成されるため、実験的に詳細な解析を行うことは難しく、未だ多くの謎が残されています。今回、本研究グループが最近開発した「逆生合成理論解析」という手法を用いて、テルペン系天然物である retigeranin の難解な生合成経路の全容を解明し、長年の謎であった立体化学の反転の仕組みや多環骨格が組み上がる生合成経路が初期配座によって高度に制御されていることなどを理論的に明らかにしました。本研究・本手法が契機となり、酵素編集などを通じて新規・人工天然物の創出や生合成機構研究の加速が期待されます。

【掲載誌】JACS Au

【論文タイトル】DFT Study on Retigerane-type Sesterterpenoid Biosynthesis: Initial Conformation of GFPP Regulates Biosynthetic Pathway, Ring-construction Order and Stereochemistry

【著者】Yuichiro Watanabe, Takahiro Hashishin, Hajime Sato,* Taro Matsuyama, Masaya Nakajima, Jun-ichi Haruta, Masanobu Uchiyama*

【doi】10.1021/jacsau.4c00313

応用化学コース 佐藤玄 特任助教の論文が Chem. Pharm. Bull. 誌にFeatured Articleとして掲載されました。Featured Articleは、CPB 編集委員会において、独創性、科学的貢献度、方法、論文構成、表現等を基準に、特に優れた論文として選定されるものです。また、本論文は Chem. Pharm. Bull. 誌の表紙にも採用されました。

近年、計算化学を用いた天然物の生合成に関する研究が精力的に進められており、複雑な生物学的プロセスの理解に大きな進歩をもたらしています。本論文では、特にテルペン化合物に焦点を当て、佐藤玄特任助教らが行った数多くの研究を詳細に概観しています。これらの研究は、天然物の生合成に関する基礎的知識に貢献するだけでなく、創薬、農業、バイオテクノロジーへの応用の可能性も秘めています。これらの研究から得られた知見は、急速に発展するこの分野における今後の研究に道を開くものです。

 

【掲載誌】Chemical and Pharmaceutical Bulletin

【論文タイトル】Theoretical Study of Natural Product Biosynthesis Using Computational Chemistry

【著者】Hajime Sato*

【doi】10.1248/cpb.c24-00082

応用化学コース佐藤玄特任助教と新潟大学大学院自然科学研究科生物有機化学分野の阿部透博士研究員(現・大学院医歯学総合研究科助教)、自然科学系(農学部)の上田大次郎助教、佐藤努教授、自然科学系(工学部)の阿部貴志教授、北海道大学大学院先端生命科学研究院の谷口透准教授らの共同研究成果が英国科学誌「Chemical Science」のオンライン版にHot article(注目論文)として掲載されました。

本研究では、立体構造モデルの類似性を基にした酵素探索を行い、従来の探索方法では発見できない新しいタイプのテルペン合成酵素を様々な生物種(細菌・真菌・植物・原生生物)のゲノム情報から効率よく発見することに成功しました。本研究は新しいタイプのテルペン合成酵素とテルペン類の探索のブレイクスルーとなる成果です。

 

様々な生物のゲノムに隠されていた新しいタイプのテルペン合成酵素を発見~新規テルペン類の大量発掘に期待~(PDF:0.7MB)

【掲載誌】Chemical Science

【論文タイトル】Structural-model-based genome mining can efficiently discover novel non-canonical terpene synthases hidden in genomes of diverse species

【著者】Tohru Abe, Haruna Shiratori, Kosuke Kashiwazaki, Kazuma Hiasa, Daijiro Ueda, Tohru Taniguchi, Hajime Sato, Takashi Abe and Tsutomu Sato

【doi】10.1039/D4SC01381F

佐藤玄特任助教が JAICI 賞を受賞

応用化学科の佐藤玄特任助教が、一般社団法人化学情報協会から JAICI 賞を受賞しました。
 
今回の受賞に関して佐藤特任助教は「このような栄誉ある賞を受賞することができ大変光栄に思います。歴代の受賞者の先生方に追いつけるよう、今後も一層研究活動に精進して参りたいと思います。また、これまで一緒に研究に取り組んでくれた共同研究者の先生方・学生達にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。」と述べております。


JAICI賞進呈のお知らせ(2023年4月)
https://www.jaici.or.jp/news/info/2023/2023-4-13/

  広島大学大学院先進理工系科学研究科のキム·サンウク助教、黒岩芳弘教授、九州大学大学院工学研究院の大学院生宮内隆輝氏(研究当時)、佐藤幸生准教授、山梨大学大学院総合研究部の研究員ナム·ヒョンウク博士、藤井一郎准教授、上野慎太郎准教授、和田智志教授からなる共同研究グループは、優れた強誘電性と圧電性をもつ非鉛系圧電セラミックス材料の合成に成功しました。スマートフォンや自動車などの電子機器に用いられている圧電素子には、長年にわたり鉛を含む圧電材料が使用されてきました。今回、合成に成功した材料は鉛を含まないために、環境にやさしい圧電材料として期待できます。SPring-8での放射光X線回折実験(SR-XRD)と高分解能透過型電子顕微鏡観察(TEM)により鉛を含まなくても優れた圧電特性が得られる新しいメカニズムを解明しました。

大学プレスリリースはこちら

  強誘電性を示す圧電材料の圧電特性は、結晶の単位構造由来の本質的寄与と強誘電分域(ドメイン)等由来の非本質的寄与により発現します。一般に、本質的な寄与分 を除いたすべての寄与分が一括りに非本質的な寄与によるものと考えられてきました。

  チタン酸バリウム(BaTiO3:BT)とビスマスフェライト(BiFeO3:BF)を固溶させてセラミックスを合成したところ、特定化学組成で立方晶に見えるにもかかわらず、優れた強誘電性を示すことを発見しました。また、従来の鉛を含むチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3:PZT)に匹敵する圧電性を示すことも発見しました。

  電場印加下での構造解析の結果、ペロブスカイト型構造のAサイトを占めるバリウム(Ba)イオンとビスマス(Bi)イオンのうち、Bi イオンが理想的な原子位置を占める Ba イオンの位置から少しずれた乱れた原子位置を占め、局所的に強誘電性を示すナノドメインを形成することを明らかにしました(図1)。このナノドメインは、電場を印加することで電場方向に整列させることが可能です。このように、非本質的な寄与の一つとしてナノドメインからの寄与というものがあり、この寄与の分を大きくすることで鉛を含まなくても優れた特性をもつ圧電材料をデザインすることができるという新しい材料設計の指針を示しました。

ナノドメインの形成.png

図1 BiFeO3-BaTiO3セラミックスにおけるナノドメインの形成

  本研究成果は材料分野で著名な国際誌である「Advanced Materials」のオンライン版に2023年2月6日付で掲載されました。https://doi.org/10.1002/adma.202208717

2022年12月1日に本学工学部応用化学科の佐藤玄特任助教が、日本薬学会「奨励賞」を受賞することが決定しました。受賞対象となった研究タイトルは、「理論計算を基軸とした天然物の生合成機構研究」です。2023 年 3月25〜28日に北海道大学で開催予定の「日本薬学会 第143回 年会」にて、受賞式と受賞講演が予定されております。
 
日本薬学会奨励賞は、薬学の基礎および応用に関し、独創的な研究業績をあげつつあり、薬学の将来を担うことが期待される若手研究者に与えられる賞です。
今回受賞対象となった研究課題は「理論計算を基軸とした天然物の生合成機構研究」です。佐藤特任助教は、薬用天然物を合成する二次代謝酵素を対象として、その生合成機構解析に関する研究に取り組んできました。これまでにテルペン環化酵素や種々の酸化酵素などの生合成酵素を実験科学と計算化学を組み合わせることにより明らかにしてきました。これらの成果は、薬用天然物の生合成反応メカニズムの解析を基盤とした創薬応用研究へと繋がることが大いに期待されます。
 
今回の受賞に関して佐藤特任助教は「このような栄誉ある賞を受賞することができ大変光栄に思います。歴代の受賞者の先生方に追いつけるよう、今後も一層研究活動に精進して参りたいと思います。また、学生時代からご指導頂いた東京大学薬学系研究科の内山真伸教授、これまで一緒に研究に取り組んでくれた共同研究者の先生方・学生達にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。」と述べております。
 
 
日本薬学会 HP:2023年度学会賞受賞者のお知らせ
 
 
佐藤玄特任助教の研究室では、計算化学・有機合成化学・生化学の三つを柱として、天然物生合成の謎を解明する研究に取り組んでいます。このような研究に興味をお持ちの学部生・大学院生・研究員、共同研究者の方がいらっしゃいましたら、当研究室 HP から是非ご連絡ください。
 
 
応用化学科 4 年生の中野萌恵さん(佐藤玄研究室所属)の論文が Chemistry—A European Journal 誌に掲載されました。
 
本論文は、海洋由来天然物 Scalarane 型セスタテルペノイド生合成における 6 員環から 7 員環への環拡大反応の反応メカニズムを計算化学を用いて明らかにしたものです。また、反応点から離れた位置にある Me 基が反応の協奏性と活性化エネルギーを制御していることも明らかにしました。
 
今回の成果について中野さんは、「一生懸命に取り組んできた研究の成果が雑誌に掲載されることとなり大変嬉しく思います。今後もより一層気を引き締めて研究活動に取り組んで参ります。ご指導いただいた佐藤先生にはこの場を借りて深く御礼申し上げます。」と述べています。
 
"Concertedness and Activation Energy Control by Distal Methyl Group during Ring Contraction/Expansion in Scalarane-type Sesterterpenoid Biosynthesis"
 
Hajime Sato,* Moe Nakano
Chem. Eur. J., 2022, in press.
 
 
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応用化学科の佐藤玄特任助教と北海道大学・東京大学のグループらの共同研究の成果がアメリカ化学会誌(Journal of the American Chemical Society)に掲載されました。
本研究では、コレステロール生合成阻害剤である天然物 Phomoidride 生合成における環化メカニズムを実験科学と計算化学を用いて明らかにしました。
 
Elucidation of Late-stage Biosynthesis of Phomoidride: Proposal of Cyclization Mechanism Affording Characteristic 9-Membered Ring of Fungal Dimeric Anhydride
 
Shintaro Yamamoto,# Taro Matsuyama,# Taro Ozaki,* Jyunya Takino, Hajime Sato, Masanobu Uchiyama,* Atsushi Minami,* and Hideaki Oikawa
J. Am. Chem. Soc., 2022, 144, 20998-21004. (#: equall contribution)
 
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工学部応用化学科の奥崎秀典 教授らの研究グループの学術論文が、英国王立化学会の学術雑誌「Soft Matter」に掲載され、グラフィックデザインがback cover(裏表紙)に選出されました。

 論文の題目は「Ionic shape memory polymer gels as multifunctional sensors」です。形状記憶性を示すイオンゲルの変形に伴うイオンの偏在化(ピエゾイオン効果)を利用することで、変位や速度を同時に検出可能なフレキシブル多機能センサを開発しました。モノのインターネット(IoT)社会におけるウェアラブル無電源センサやエネルギーハーベスト(環境発電)への応用が期待できます。

 奥崎教授は、「本研究に取り組んでくれた学生達に感謝します。今後はさらなる高性能化とメカニズム解明に取り組みたいと思います」とコメントしています。

 

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論文が掲載されたSoft Matterの裏表紙

 

論文掲載URL:https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2022/sm/d2sm00515h