JAICI賞進呈のお知らせ(2023年4月)
https://www.jaici.or.jp/news/info/2023/2023-4-13/
研究成果の最近の情報
広島大学大学院先進理工系科学研究科のキム·サンウク助教、黒岩芳弘教授、九州大学大学院工学研究院の大学院生宮内隆輝氏(研究当時)、佐藤幸生准教授、山梨大学大学院総合研究部の研究員ナム·ヒョンウク博士、藤井一郎准教授、上野慎太郎准教授、和田智志教授からなる共同研究グループは、優れた強誘電性と圧電性をもつ非鉛系圧電セラミックス材料の合成に成功しました。スマートフォンや自動車などの電子機器に用いられている圧電素子には、長年にわたり鉛を含む圧電材料が使用されてきました。今回、合成に成功した材料は鉛を含まないために、環境にやさしい圧電材料として期待できます。SPring-8での放射光X線回折実験(SR-XRD)と高分解能透過型電子顕微鏡観察(TEM)により鉛を含まなくても優れた圧電特性が得られる新しいメカニズムを解明しました。
強誘電性を示す圧電材料の圧電特性は、結晶の単位構造由来の本質的寄与と強誘電分域(ドメイン)等由来の非本質的寄与により発現します。一般に、本質的な寄与分 を除いたすべての寄与分が一括りに非本質的な寄与によるものと考えられてきました。
チタン酸バリウム(BaTiO3:BT)とビスマスフェライト(BiFeO3:BF)を固溶させてセラミックスを合成したところ、特定化学組成で立方晶に見えるにもかかわらず、優れた強誘電性を示すことを発見しました。また、従来の鉛を含むチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3:PZT)に匹敵する圧電性を示すことも発見しました。
電場印加下での構造解析の結果、ペロブスカイト型構造のAサイトを占めるバリウム(Ba)イオンとビスマス(Bi)イオンのうち、Bi イオンが理想的な原子位置を占める Ba イオンの位置から少しずれた乱れた原子位置を占め、局所的に強誘電性を示すナノドメインを形成することを明らかにしました(図1)。このナノドメインは、電場を印加することで電場方向に整列させることが可能です。このように、非本質的な寄与の一つとしてナノドメインからの寄与というものがあり、この寄与の分を大きくすることで鉛を含まなくても優れた特性をもつ圧電材料をデザインすることができるという新しい材料設計の指針を示しました。
図1 BiFeO3-BaTiO3セラミックスにおけるナノドメインの形成
本研究成果は材料分野で著名な国際誌である「Advanced Materials」のオンライン版に2023年2月6日付で掲載されました。https://doi.org/10.1002/adma.202208717
工学部応用化学科の奥崎秀典 教授らの研究グループの学術論文が、英国王立化学会の学術雑誌「Soft Matter」に掲載され、グラフィックデザインがback cover(裏表紙)に選出されました。
論文の題目は「Ionic shape memory polymer gels as multifunctional sensors」です。形状記憶性を示すイオンゲルの変形に伴うイオンの偏在化(ピエゾイオン効果)を利用することで、変位や速度を同時に検出可能なフレキシブル多機能センサを開発しました。モノのインターネット(IoT)社会におけるウェアラブル無電源センサやエネルギーハーベスト(環境発電)への応用が期待できます。
奥崎教授は、「本研究に取り組んでくれた学生達に感謝します。今後はさらなる高性能化とメカニズム解明に取り組みたいと思います」とコメントしています。
論文が掲載されたSoft Matterの裏表紙
論文掲載URL:https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2022/sm/d2sm00515h
令和4年9月14日(水)から16日(金)に、徳島大学(徳島県徳島市)にてハイブリット形式で開催された「日本セラミックス協会第35回秋季シンポジウム」において、工学専攻応用化学コース修士課程2年の斉藤聖さん(指導教員:上野慎太郎准教授)が、同会の特定セッション「誘電材料の最前線 ~持続可能な社会に向けた高機能材料の創出と応用~」のポスター発表にて「優秀賞」を受賞しました。本賞は優秀なポスター発表を行った学生に授与され、その功績を称えるとともに研究の更なる発展を奨励するものです。
受賞対象となった研究題目は「フラックス法による高結晶性マイクロ波誘電体Mg2SiO4板状結晶の合成」で、損失が非常に小さなマイクロ波誘電体として知られるMg2SiO4の合成温度を従来の約半分の550℃に低下させ、かつ結晶性が高くマイクロメートルサイズの板状結晶が得られる合成法を確立した成果について報告しました。この手法の確立により高性能の大容量高速通信用マイクロ波誘電デバイス等の開発に繋がることが期待されます。
受賞した斉藤さんは、「この度は優秀賞を受賞することができ、大変光栄に思います。ご指導していただいた上野慎太郎准教授、和田智志教授、藤井一郎准教授をはじめ、本研究にご協力いただいた共同研究先のご関係者の皆様に深く御礼申し上げます。今後もこの賞を励みに研究活動に邁進したいと思います。」と述べています。
令和4年5月25日(水)から27日(金)、オンラインで開催された第71回高分子学会年次大会において、靖宇馨さん(大学院修士課程2年 応用化学コース、指導教員:奥崎秀典教授)が、優秀ポスター賞を受賞しました。本賞は、高分子科学ならびに高分子学会の発展に資する優れたポスター発表を行った若手研究者に与えられます。
受賞テーマは「電解重合による可溶性自己ドープ型PEDOTの合成」で、電解重合法により可溶性自己ドープ型導電性高分子のS-PEDOTを合成し、従来に比べ二桁以上高い電気伝導度を得ることに成功しました。ポスター発表と質疑応答、研究の新規性や成果のインパクトが評価されての受賞となりました。
受賞した靖さんは、「この度は、高分子学会優秀ポスター賞という名誉ある賞を頂き大変光栄に思います。指導教員である奥崎教授をはじめ、研究をサポートしてくださった研究室のメンバーには心より感謝いたしております。この賞を励みとして、今後もさらなる研究へと発展させることができるように取り組んでいきたいと思います」と述べています。
大学院修士課程応用化学専攻の亀井脩平さんが、2022年6月9日(木)・10日(金)に石垣市で開催された第29回クロマトグラフィ―シンポジウムにおいて、優秀ポスター発表賞を受賞しました。この賞は学生の発表のうち優秀な発表に贈られるもので、優秀ポスター発表賞は亀井さんを含め4名が受賞しました。