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矢崎晃平特任助教らの研究成果が英国科学誌Nature Communicationsに掲載

 英国科学誌Nature Publishing Groupの「Nature Communications」の平成29年6月28日(英国時間)のオンライン版に、工学部応用化学科の矢崎晃平特任助教らの研究成果が掲載されました。論文題目は、「Polyaromatic Molecular Peanuts(多環芳香族骨格からなる分子ピーナッツ)」で、2種類の相互作用(配位結合とπ-π相互作用)を巧みに利用することで、ピーナッツの種(たね)と殻(から)が作る複雑な立体構造である「コアシェル構造」の再現に世界で初めて成功しました。詳細な内容は以下の通りです。

 

Yazaki_Peanut.jpg

 植物は、花や果実、種子などの複雑な立体構造をいとも簡単に作り出しています。例えばピーナッツは、ダンベル型の殻の内部に2つの種を含むユニークな階層構造を持っています。しかし、自然界に存在するこのような複雑な「かたち」を人工的に化学合成することは依然として困難な課題です。そこで、矢崎特任助教らは、新たな合成戦略によるピーナッツ型分子の作製に挑戦しました。具体的には、まず新規W型配位子と金属イオンとの「配位結合」による自己集合を利用して、分子ダブルカプセルを合成しました。この溶液にフラーレンC60を添加することで、「π-スタッキング相互作用」を駆動力として、中央の金属イオンの脱離を伴う、二つのフラーレンを内包したピーナッツ型構造体の定量的生成を確認しました。すなわち、性質の異なる2種類の化学結合を組み合わせることで、複雑な植物構造体を模倣合成する新手法を開発しました。この研究は、東京工業大学科学技術創生研究院の吉沢道人准教授やインド工科大学マドラス校のDillip K. Chand教授らの他、株式会社リガクの研究員の方々との共同研究によるものです。

 

矢崎特任助教の言葉

 ピーナッツは、我々の生活と馴染みの深い食べ物で、多くの人がその「かたち」を目にしたことがあると思います。そのため、本研究のピーナッツ型の分子には、化学に詳しくない中学生や高校生、学部生でも興味を持ってもらえると期待しています。一方で、その合成過程は、非常に精密に設計してあるため、有機や超分子化学の専門家から見ても面白い内容となっています。私は、山梨大学に移って来たばかりですが、化学を知らない人から見ても面白く、専門家から見ても奥が深い研究をしたいと考えています。